オーギュスト・ヴェストリスのアイデアを推し進めるために
2002年11月
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バレエ界の近年の現象にかんして、私としてはやんわりとコメントしたつもりでしたが、そのコメントに対して、この数週間に厳しく、荒々しくさえある批判が寄せられました。そこで組織を作ろうと思い立ちました。今のところはただ一人の構成員ですが、新しい会員を歓迎します。
I. この組織にはオーギュスト・ヴェストリス(1760—1842)の名前を掲げます。カルロ・ブラシス、ジュール・ペロー、オーギュスト・ヴェストリスの教師である彼は、a法則を重んじ、b天才であり、cそして多分周囲にいてとても楽しい人だろうと思われるからです。
ヴェストリス・・美ばかりがもてはやされるこの時代に、何とも相応しい選択であることか。傑出したダンサーであるにもかかわらず、彼は驚くほどに魅力のない、ヒキガエルのような人だったといわれています。
踊れさえすれば、ヒキガエルだろうと受け入れましょう。踊る人ならば短足で、肥っていて、醜くても受け入れましょう。
だからと言って、組織が名誉会員として名前を挙げるダンサーたちがヒキガエルだというのではありません。むしろ逆の人たちです。しかし、ここで重要なのは物事の原則なのです。
II. 組織は以下のように運営されます。
組織はフランスに基礎を置きます。第一にヴェストリスがこの地で教えていたから。そして最初のメンバーが現在ここに住んでいるからです。
バレエにとって、フランスは重要とされています。
現在のところ組織には経済的基盤はありません。会員証、お役所的な手続きもありません。書類は原稿を送りたい場合には受け付けますが、それ以外はすべてインターネットを通じてのやりとりになります。
III. 原理原則
組織が控えめながら目指すところは、レオナルド・ダ・ヴィンチが語るところの新しくて古い原理原則に戻ることです。
(i) エポールマン(レオナルドの作品にも見られます)
(ii) はっきりとした分類
たとえば極端ですが ー A顔、とB足
A脚、とB野球のバット を区別すること
AとBの間には足を踏み入れてはならない領域があるのです。
(iii) クラシックのマイムテクニック
(iv) バレエは劇場芸術であり、バレエの動きによる表現は音楽とドラマとをつなげる役割を果たす
IV. 経済基盤がなく、時間も許さないので不可能かもしれませんが、組織はレクチャーやデモンストレーションの機会をもちたいと考えます。ダンサーはここで作品の一節を二つのスタイルで披露し、教師は意見を述べ合います。
現在のところ組織の活動は次のような限られたものになります。
(i) エッセイ、意見発表、本の紹介、あるいは質問を歓迎します。専門家でも、愛好家でも、あるいは現在のテクニックのあり方を嘆いて立て直しを求める人たちからの寄稿を求めます。
(ii) まじめな、歴史的主題に基づく新しい台本を歓迎します。1960年代のハリウッド映画のリメーク版は好ましくありません。
(iii) クラシックバレエのテクニックを向上させるための具体的、実際的な提案があれば、広く知らしめて行きます。
(iv) 名誉会員としてのすぐれたダンサーの推薦を求めます。このタイトルのおかげで昇進したり、高い給料がもらえたりするわけではありません。ただし、判断基準は厳しく、厳密にクラシックの訓練を受けてあり、品格、自制心をもち、音楽性に優れたダンサーです。
トーマス・ルンとエマニュエル・ティボーを最初の二人としたいと考えます。
ミテキ・クドウ、ウルドブラーム等の候補もありますが、世界を見渡せはほかにも足を高く上げることばかりを思わない、踊りを見せてくれる人を見つけられるでしょう。アドヴァイスを歓迎します。
V. ヴェストリス・ソサエティは、バレエファンというよりは、バレエとは芸術の一つの形式であること理解している愛好家を求めます。
VI. ダンサーの体にとって過酷な動きを求める振付などについては、これをよしとせず、ダンサーを守るための付属的機関を作る必要があるかもしれません・
VII. 才能ある教師についての情報を歓迎します。ダコタとかインヴァネス、カムチャッカのように人の目に触れないでいる才能を見出し、世に送らなければなりません。
ステージで踊っている彼らの優れた弟子のようには世の中に知られない教師に、その仕事について話し合う許可を得て是非話しましょう。
VIII. 肌の色が白い人だけが世界のトップクラスのカンパニーに入るという考えには賛成できません。既出の基準に沿う人であれば黒人ダンサーも名誉会員として受け入れます。
皆様の寄付、寄稿、投稿をお待ちしています
キャサリン・カンター
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